「ハイデー、ただいまー腹減ったー」

 エドは帰りつくなり『メシはーメシー』と連呼しながら、真っすぐキッチンに向かうものの求める姿は何処にも見当たらなかった。
 なので、さてどうしたものかと他を探してみれば。

「ありゃ、発見」

 確かにハイデリヒは同居人なのだから、この家の何処に居てもおかしくはない。
 だが何故、エドの部屋のベッドで眠っているのだろうか?

「しかも『それ』は、アレだよな」

 安らかに眠るハイデリヒの腕の中、大事に抱き込まれている白い布の塊は、間違えようもなく自分のシャツだ。
 これはまた……何と言おうか、何ともニヤけてしまいそうなシチュエーションではないか?

 暫くぶりに自宅に帰ってみれば、可愛い想い人が自分のシャツを握り締めて眠っている。

 これは男として、かなり喜ばしい光景ではないか?

 普段は生意気なことも言うけれど、こうして眠る姿はいっそあどけなくすらある。
 起こさないようにベッドに腰を下ろし、そっとそっと、その髪に指を伸ばず。
 少しクセのある柔らかな髪はアルと同じ手触りで、寝顔もまたアルとそっくりで。
 それは嫌でもエドの郷愁を誘うけれど、けれどハイデリヒはハイデリヒであり、アルフォンスではない。
 その証拠に、その安らかな寝顔にキスしてみたいとか、どうせ抱き締めるならシャツでなくて自分にしてほしいなとか。
 弟のアルフォンスに対しては、終ぞ思い付かなかった希望がこうして湧いてくるのだから、想いの違いの程が判ろうというものだ。

「ハーイデー? 起きないのかー?」

 ぷくぷくな頬を指で突けば、邪魔そうに手で払われた。
 ああ、こんな処までアルフォンスと同じなのに、見つめる視線1つさえ意味合いは全く違うのだから。
 そうしてエドに、
 帰りたいと。
 帰りたくないと。
 2つの相反する気持ちを抱かせるのだから始末に悪い。
 結構狡いよなぁお前と、苦笑することすら、楽しくて堪らないから。

「起きないと、キスするぞー?」

 どうぞ、そのまま起きないでと、エドは言外に含めて囁く。
 軽く覆い被さり、そっと唇を指でなぞる。
 だって柔らかな桜色のそれは、今のエドが望む返事を返してくれないから。
 ならばこのまま、奪ってしまったとて何の罪があるだろうか?
 にやりと、口元が悪戯っぽく弧を描き、いそいそと顔を接近させていったが。

「ん…ん? エトヴァルト…?」

 唇が触れる10センチ前で、呪いは解けてしまったらしい。

「モーゲン、ハイデ」

 髪に触れながらエドが微笑めば、とろんと寝呆けながらも嬉しげな笑顔が答えてくる。

「…モーゲン…あのね、きみの好きな、シチューがあるんだ…あっためてくるから…」

 そう言いながら、体を起こそうとするハイデリヒの手を掴み、そのまま抱き寄せてしまう。

「エトヴァルト…?」
「オレも眠いから、少し寝る…一緒に寝よう、ハイデリヒ」

 ハイデリヒの頭を胸に抱き込んで、エドは低く優しく囁きかける。

「こうすりゃ、あったかいしな」

 ハイデリヒを抱いたまま、エドは2人の体を毛布で包み込んでしまう。
 互いのぬくもりが重なり合い、疲れたエドに、半覚醒だったハイデリヒに、優しい睡魔を呼び寄せて。

「お休みハイデリヒ」
「おやすみ…」

 背中に回ったハイデリヒの手に。
 髪に触れているエドの手に。
 互いの存在に、暖かなやすらぎを感じあって。

 お休みなさい。


   END







エルリック一族(笑)の元アルフォンス現父さんこと
澤内七穂様より再びふんだくって…もとい頂いてきました!
ぐはぁぁぁぁぁ!!!!!!!!(吐血)
ア、ああああかんもうあかんオレがハイデを襲いたいい……!!!(ヲイ)
そうですかハイデたんのてでぃべあるはエトヴァルトさんなんですね……(オレと替われ/大笑)
つーかTeddy自体がなぁ…(笑/この笑いの意味が解らん方は是非調べましょう、ものっそい色々と笑えますから)

んで、これというかこれの前の裏ヴァージョンを頂きましたがそれはハイデたんサイトの方に上げてあります。
読んで!みんな読んで!ものっそいエトヴァルトが男前だから!!!(其処か)
 
 

 back