きらきらきらきら。
眩しすぎる程に灯された屋台の明かりが置かれたそれに当たって乱反射して、余計に眩しい。
きらきらきらきら。
周りにいる人々の顔も、何処か眩し気にしあわせに微笑んで。
「……えーと、聖人の誕生を祝う祭だった、か」
「うん。キリストの降誕を…『神様が人間として産まれてきてくださったこと』を祝う日かな」
「それにしちゃ、この飾りはどうかと思うがなぁ」
「お祭りだもの、楽しまなきゃね」
「そういうものか」
「そういうものだよ」
硝子に塗装をした色とりどりの飾り玉。
金や銀の房飾りや、赤に緑のリボン。
セルロイドの星、瀬戸物の蝋燭。
そして大きなおおきな樅の樹。
少し離れた場所はルナパークになっているのか、移動遊具がこれまた闇夜に星にも負けぬ光を放っている。
きらきら、きらきら、きらきら。
洪水のように。
きらきら、きらきら、きらきら。
覆い尽くす様に。
この、空間には満ち満ちて。
「……溺れそう、だ」
この、感情を何と言ったらいいのか。
「もう人混みに酔った?」
「いや」
しあわせ、が。
この場所には満ち溢れ過ぎて。
ああ、今。
この時が停まればいいと。
永遠になってしまえばいいと。
「……お前に、かな」
そんなことを、考えてしまう。
「いっ、い、いきなり何いってんだよ!」
「酔ってんのかもなぁ……お前に」
「黙れ!黙らないとグリューワインあげないからね!」
聖なる夜に、贈り物がもらえるというのなら。
何度でも。
そう、何度でも。
こうやってお前と他愛無い事を交わし合い。
静かに安らかに過ごせたら、と。
柄にも無い事を願ってみようか。
「どうせなら口移し」
「っっっっ!いい加減にしろ、エトヴァルトっ!」
きらきら。
光は淡い金をふわりと輝かせる。
きらきら。
光は空の碧をゆらりと煌めかせる。
こんなに綺麗な存在が側に、いる。
そんな些細な事も、しあわせの一つ。
「ハイデ」
「……何、だよ!」
「Danke…Danke schön. Ich mag Sie. 」
「……言ったら機嫌直すとでも思ってる?」
「思った事を言ったまでだ。ワイン呑んだら完全に冷える前に帰ろうぜ」
「え?買って行かないの?」
「飾りよりも」
この時間が。
お前が側にいる事が。
「お前の方が綺麗だからいらないな」
オレにとっては何よりの事なのだと。
お前は知らないのだろうな。
「……恥ずかしい事ばっかり言ってないでよ」
「オレは正直に思った事をだな」
「はいはい。ほら、呑むでしょこれ。呑んだらもう一回りだけつき合ってよ?」
「…了解、ハイデ」
きらきらきら。
微笑む顔が、跳ね返す光に解ける。
きらきらきら。
返す言葉に解けた笑顔が、何より輝く。
Weihnachtenの市の光よりも、オレにはお前の方が眩しい。
光差さぬモノクロームの世界に、差し込んだ唯一の。
お前こそが、冬を越えるOstaraが齎す光。
そんな言葉は、腹の底に仕舞い込んで。
オレはまた、いつものように隣に立とう。
きらきら。
空から舞い降り始めた雪が、光を孕む。
きらきら。
それを認めたお前の瞳が、空の星を映し込んで。
しあわせそうに、きらりきらりと煌めいていた。
きららの星 2008.11.07
微妙にクリスマス市の話。あれだけ資料あったのに何処に行ったんじゃ……
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