夢だ、と
これは夢だとただ、願った
だが心の何処かで
これは現実だと何かが、囁く
この狂ってイカレた意識にはもう
その境界すら曖昧に成りつつあるというのに
まだオレは
何処かでこの行き先すら無い希望に縋っていた
何時かお前に逢えるのだという
幻想のような希望に
だがもうその希望すらオレは
自らの手で打ち砕く
もうそれが
偽りだとしても構わなかった
目の前にいる
アイツがお前では無いと
理解していた筈だった
だがこの濁った瞳はもはや
真実を映すことは無く
この壊れた心はただ一つの
お前たちの相違すら否定する
もう思考は何も呼び起こさない
憐れだとこの身を歎く奴も
それをやめろと止める奴も此処には
もういない
オレは
ただ一つのお前の名を呼び
お前を抱きしめ
お前の温もりを感じて
お前に溺れ
いつしか無惨に
いっそ不様に堕ちていく
差し伸べられる腕は
囁かれる声は
移し与えられる体温は
愛しい
いとしい
イトシイ
タッタヒトツダケ の
まほろばの ───── 悪夢